株式会社Piezo Sonicは、2024年3月15日〜3月16日、福岡県北九州市の「いのちのたび博物館」にて、弊社の純国産AMR:Mightyの遠隔観覧実証実験を行いました。
弊社は、北九州市SDGsスタートアップエコシステムコンソーシアムによる「2023年度北九州市グローバルアクセラレーションプログラム GAP-K」に採択され、本実験はその支援事業として行いました。
GAP-K:https://gap-k.com/
実験では閉館後の博物館内を、カメラを搭載したMightyが「ナイトウォーク」しながら撮影し、その映像を別室のPCにインターネットを介してリアルタイムで送信しました。また、そのPCの画面を見ているスタッフが臨場感を感じるように、Mightyのカメラを任意の方向に操作できるように準備しました。
この記事では、実験の計画段階から実験当日のエピソード、さらに当日の様子をまとめた映像まで余すところなくお届けします。
【開催概要】
■会期:2024年3月15日(金)~3月16日(土)
■会場:いのちのたび博物館(福岡県北九州市)
■協賛:北九州市 産業経済局地域経済振興部 スタートアップ推進課、グローバルアクセラレーションプログラム GAP-K
■協力:北九州市、いのちのたび博物館、神田工業株式会社 Mightyチームの皆さま
Atlas Direction株式会社
【もくじ】
今回の走行実験実施の背景
弊社が採択された「グローバルアクセラレーションプログラム GAP-K」では、企業ごとに北九州市のスタッフとサポート担当としてデトイトトーマツ社のスタッフが専属配備されました。
特に、北九州市のスタッフの方々には多大なご尽力を賜ることができ、純国産AMR:Mightyによる実証実験に取組むことができました。
本実験の舞台選定にあたっては、北九州市内から「いのちのたび博物館」様、「イオンモール」様、「JOYPOLIS SPORTS」様、さらには「九州鉄道博物館」様が候補として提案されました。そのうち、走行イメージや実験内容、またご協力頂ける体制について打ち合わせを重ねた結果、「いのちのたび博物館」様での実施が決まりました。
生命の進化の道筋と人の歴史を解説「いのちのたび博物館」とは
いのちのたび博物館(正式名称:北九州市立自然史・歴史博物館)は、新日本製鐵八幡製鐵所の工場跡地の一角に建設された博物館として、2002年11月に開館しました。
生命の進化の道筋と人の歴史を展示解説し、未来へ向けてのわたしたちの生き方を考えるために「いのちのたび」をコンセプトとする本館。日本国内の博物館の中でも有数の資料数と、特に恐竜の骨格標本や動くジオラマなど、恐竜に関する展示が充実していることで知られています。
展示空間は、来館者がまるでショッピングモールを散歩するような感覚で楽しく学べるよう「アースモール」「カルチャーモール」と名づけたメインストリートを中心に、エンバイラマ館、探究館などの展示スペースを配置しています。
常設展として、自然史部門では恐竜をはじめとしたさまざまな生物を展示し、中でも生命の歴史をテーマとした「アースモール」では、展示空間の大きさを生かし、「スー」と呼ばれるティラノサウルスをはじめとする恐竜の等身大の全身骨格復元が展示されています。
この度の実験では、3月15日・3月16日ともに閉館後である17時〜20時の時間を確保いただき、剥製や恐竜展示の全景を見渡せるルートでの「ナイトウォーク」が実現。博物館ならではの貴重な展示が集う場所を走行できることはもちろんのこと、館内のジオラマドームや各コーナー、スロープなど都度変化する走行条件や環境に合わせたMightyのコントロールが求められました。
実証実験 走行経路
自動搬送を実現するAMR:Mighty-Dシリーズ
Piezo Sonic社のMighty-Dシリーズは、日本の月面探査ロボットの不整地走行性能技術を応用した、特殊なサスペンション機構(特許申請済)と「待機電力ゼロで姿勢を保持」できるピエゾソニック モータをステアリング機構に搭載した純国産AMRです。
今回実験に利用したMighty-D4シリーズは走行性能として、12cmの段差乗越えやその場旋回、真横移動が可能です。そのため、屋外・屋内を問わず足場の悪い路面も含めたあらゆる場所で、路面状況を気にすることなく走行することができます。
2021年より販売を開始したMighty-Dシリーズは、人の生活環境に適応するサポートロボットを目指しています。搭載カメラとセンサにより目的地までの自動走行に加え、人やマーカーを認識した追従走行ができ、市街地や病院、高層マンション等での非接触・非対面物流や遠隔応対を実現します。
現在、本格的な導入に向け、工場やプラント、屋外と屋内の移動を要する大規模施設などでの試験導入が進んでいます。Mighty-Dシリーズは搬送業務だけでなく、計測や案内、作業支援ロボットの移動ロボットプラットフォームとしても活躍できるよう、ハードウェア、ソフトウェアともに継続的に開発を進めています。
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Mightyは、お客様のご要望に応じたカスタマイズのご相談も承っています。
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Mightyを介し、臨場感ある観覧映像をリアルタイム配信
今回の実験は、複数のカメラを搭載したMightyが館内を「ナイトウォーク」し、撮影した映像をインターネットを介してリアルタイムで送信するという内容です。映像は別室で待機する関係者へのパソコンで見ることができます。
Mightyに搭載したカメラは、スマートフォンを介して遠隔での独立操作を行うことができ、インターネットを介して臨場感のある美しい映像を届けることに主眼を据えました。
ミッションの実現にあたり、Mightyに新たな装備の追加を行いました。
計画当初では、Mightyに従来から付属しているカメラでの撮影を想定していましたが、臨場感ある映像美を実現すべく、新たにパンチルト可能なカメラ、遠隔操作用広角カメラ、360°カメラの複数のカメラをMightyの天板上(全高180㎝程度の位置)に追加で取り付けました。
※実験では360°カメラは未使用
さらに、Mightyの走行による振動の影響を受けないよう、手ブレ防止機能を備えたカメラを搭載し、映像のクオリティーにもこだわりました。
カメラの追加は、Mightyに新たな「目」を増やすイメージです。Mightyの目を通して、私たち人間もMightyのカメラが捉えたものをインターネット越しで見るという、リアルな視覚の共有を試みた実験となりました。
これまでのMightyは、Wi-Fiやローカル5Gなどのクローズドなネットワーク環境下では無線での操作が可能でしたが、今回はインターネット越しでの操作を実現する必要がありました。
そのため、Mightyから送信される映像の遅延が発生しない画像転送サービス(協力:Atlas Direction)の選択や、回線が途切れないよう入念なテストを行いました。
Mighty搭載カメラをスマートフォン上で操作する様子
Mighty搭載カメラで撮影した映像は、インターネットを介してリアルタイムで送信される
世界初!? 恐竜とのコラボ Mightyとめぐるいのちのたび
いざ迎えた実験当日。日が傾き、来場者が博物館をあとにし、静まり返った閉館後の博物館。恐竜や剥製たちが見守る中、弊社スタッフといのちのたび博物館様のご関係者様、そしてMightyの挑戦が始まりました。
問題なくMightyは走行でき、撮影した映像を送受信できるのか。入念なシミュレーションを重ね、Mightyの遠隔操作に慣れたオペレーターたちの顔にも緊張感が漂います。
そんな私たちの心配をよそに、Mightyは館内を自在に走行。狭い観覧ルートや、坂になったスロープも難なく安定した走りを見せました。
同じ頃、控室では関係者がMightyが撮影した映像を受信するパソコン画面を固唾を呑んで見守ります。
想定通り、Mightyが捉えた映像が受信されると、関係者たちからは歓声とともに拍手が沸き起こりました。
順調に館内を走行するMighyのカメラからは、続々と映像が送られてきます。控え室の面々も、自身の目で見るのとはまた違った、Mightyの目を通して見る古代の生物の迫力に見入ってしまいました。
今回新たに取り付けたカメラによって、より人間の視線の高さに近い場所から撮影ができたことにより、リアルで臨場感あふれるビジョンで展示物を観覧することができました。
2024年生まれのMighty-D4と、人類が誕生する遥か昔から地球上に生きていた大きな恐竜や古代生物たち。
何億歳もの年齢差がある彼らが、時を経てこうして同じ空間に揃うのも不思議な運命を感じます。Mightyもきっと、初めて見る光景に圧倒されながらも、ワクワクした気持ちを胸に抱きながら館内を回っていたことでしょう。
今回の実証実験により、Mightyからの映像をインターネットを介し遠隔地で受信し、操作ができるようになったことは、弊社が掲げる『ケガや病気になっても楽しめる生活ができる社会』を実現する大きな一歩になったと考えています。
本機能により、たとえば美術館や博物館など現地に行くことが難しい人でも、Mighty越しに展示の鑑賞やイベントなどをその場にいるかのような臨場感をもって体験できる活用が考えれれます。また、夜間の室内警備・見守りにも大きく貢献できることでしょう。
さらに、今回Mightyの天板に取り付けたようなロボットアーム装着のカスタマイズも計画しています。遠隔操作可能なカメラ機能とロボットアームを合わせることで、作業の自動化などでの活用も想定しています。
本実験の実施にあたり、北九州市のご担当者様、同博物館のご担当者様と学芸員様、そして神田工業株式会社様、Atlas Direction株式会社には、実験当日に至るまで多大なるご協力を賜りましたこと、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
今後も多くの方々に、弊社や弊社製品に興味を持っていただけますと幸いです。
併せて、新しい製品開発に取り組むエンジニア、スタッフを募集しておりますので、ご興味を持っていただいた方はご連絡ください。
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